集積所

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レンズ雲のゆくえ(今井あこソロダンス)感想

3/28 16:30

 

指と指の間をするりと抜けて行くような、そして握りしめることが出来ないようなものへの探求。

 

一見反復に見える動きにcresc.の記号が付き、宙に霧散する。(または何かに気づくようにハッと収束する?)この作品の中でよく見られたこれら一連の流れが、山へ向かい、山を歩き、そして帰ってくること、つまりその場の現象への探求と共に、踊ることそのものに対して演者が経てきた過程、探求を彷彿とさせる。

 

演者の右手が身体を離れて別個体の感覚器官のように分離して見える冒頭の動きから、徐々に右手が身体へと触覚を伝達していく様がゆっくり時間をかけてわかっていく。それをじっくりと観察する。舞台が少し明るくなるまでのこの時間に、手に汗が滲むくらいの緊張感があった。

 

演者がこちら側に何かを訴えかけるのではなく、演者自身が動きに対して向き合い続け、それが身体の中で何度も循環され、放出されていくようなダンス。その中で誰よりも自分の(そして身体の)強さや弱さを理解しようとしていて、誰のためでもなく演者自身のために踊っている、少なくとも私はそう見えた。その上で、それを私が見ることが出来るのは、とても幸運なことだ。

 

短いので追記も出来たらしようと思いますが、見に行った人はぜひ言葉にしてみてほしいです(それを読みたい)。